「冬になると生理痛がひどくなる気がする」
このような声を、外来でよく耳にします。実はこの感覚、医学的にも裏付けのある現象です。
■ 寒さが月経痛を悪化させるメカニズム
寒冷刺激を受けると、私たちの体は体温を保つために血管を収縮させます。これは自然な防御反応ですが、骨盤内でも同じことが起こります。
その結果、
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子宮や骨盤周囲の血流が低下
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月経時に分泌される「プロスタグランジン(痛みを起こす物質)」がうまく排出されない
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子宮の収縮が強まり、痛みが増強する
という流れが生じます。
イメージとしては、
「痛みの原因物質が寒さで流れにくくなり、子宮の中に滞留してしまう」状態です。
このため、冬場や冷房の効いた環境では、生理痛が強くなりやすいことが分かっています。
冷えと月経痛に対する治療アプローチ
① 漢方治療(当帰芍薬散・加味逍遙散など)
漢方は「冷え」を体質として捉え、全身のバランスを整える治療です。
● 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
・血流を改善し、体を内側から温める
・「血虚(血が足りない)」「水滞(水分代謝の低下)」タイプに適応
・冷えやすく、むくみやすい方に向いています
● 加味逍遙散(かみしょうようさん)
・自律神経の乱れを整える
・ストレスやイライラ、ホルモン変動による不調に有効
※市販薬もありますが、医療機関で処方される漢方は有効成分量が安定しており、保険適用になる点が大きなメリットです。
② 低用量ピル(LEP製剤)
低用量ピルは排卵を抑制し、子宮内膜を薄く保つことで、
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プロスタグランジンの産生を抑える
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月経量を減らす
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月経痛を軽減する
という作用があります。
特に、
・月経痛が強い
・PMSもつらい
・生理周期が不安定
・月経前に肌荒れ、にきびが悪化する
といった方に有効です。
③ ミレーナ(子宮内黄体ホルモン放出システム)
ミレーナは子宮内に留置する小さな器具で、局所的に黄体ホルモンを放出します。
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子宮内膜を強力に薄くする
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月経量を大幅に減らす
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貧血や冷えの改善につながる
「月経量が多くてつらい」「ピルの内服が合わない」という方に特に適しています。
5年間効果が持続する点もメリットですが、PMSの症状には効きにくいところが弱点です。
日常生活でできる冷え対策
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シャワーだけで済まさず、湯船につかる
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お腹・腰・足首を冷やさない
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「三陰交(内くるぶしの上)」を温める
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冷たい飲食物を控える
これらを意識するだけでも、月経痛の軽減につながることがあります。
まとめ
✔ 冷えは月経痛を悪化させる医学的根拠がある
✔ 血流低下とプロスタグランジンの滞留が痛みの原因
✔ 漢方・低用量ピル・ミレーナはいずれも有効な治療選択肢
✔ 体質やライフスタイルに合わせた治療選択が重要
「毎月の痛みは仕方ないもの」と我慢せず、
ご自身に合った治療法を一緒に見つけていきましょう。